大家業にとって『物件』は、会社にとっての『社員』のようなものだと思う。
ボクの会社は新入社員(新築)を受け入れる余裕がないから、定年(耐用年数)を過ぎた老人たち(築古)を安い給料で社員にしてるってわけだ。
年老いた物件ばかりなので、設備も古いし見た目も古くさい。
雨漏りやシロアリのような病気にかかり、瀕死状態の社員もいる。
でも『物件』が『社員』と違うのは、病気を治療(リフォーム)して、アンチエイジング(リノベーション)して若返らせて、バリバリ働かせる(賃貸する)ことができるってことだ。
生まれついた土壌が弱く、『地盤沈下』という大病を患い、定年を過ぎて『雨漏り』まで発症。
今にも死にそうな状態で入社してきた、『崖の上の傾き戸建』。
そんな『彼』が、どのように復活したのか。
今回よりシリーズ化して、毎回1部屋ごとに紹介していく。
まずはリビングから、ビフォーアフターとともにDIYリノベで甦っていく過程をご覧いただこう。


傾き戸建のリビング、ビフォーアフター
・9cmの傾き
広い12畳リビングは、窓からの眺めも風通しも良く完璧だ。
ただし、片側が9cm沈んでいることを除けば…
最初は傾きを直すために、『DIYジャッキアップ』をしようと思った。
曳家(家の傾きを直す職人)の本を読んだり、asseyさんのDIYジャッキアップ物件を関西まで見学に行った。
asseyさんのジャッキアップ見学会の記事は、コチラ
でもジャッキアップのことを調べていくうちに、解ったことがある。
それは「やめた方がいい」ということ。
コストがかかり過ぎるし、壁や建具への負担が大きすぎる。
(本物の曳家は、数十台のジャッキを同時に使って基礎を作り直したりする)
ここは転進して、床を水平にレベル調整して対応することにした。
大引きとの間に高さ調整の木材を挟んで、根太は引き直し。
地味で地道な地獄の作業だ。
これがもし15cmを超えるような傾きだったら、『床だけ水平にする』のは難しかっただろう。
床面がドアや入口と干渉して、調整できる範囲を超えてしまうからだ。

一番低い位置は本来の床より5cmほど下げて、入口との干渉をギリギリまで減らして調整する。

つねにレーザー墨出し器で、水平を確認しながら工事する。
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Huepar 3×360° レーザー墨出し器 フルライン
余談だが、『傾いている家』は、手抜き工事をしているところが多いと思う。
床下の見えないところにゴミが落ちていたり、下地木材の組み方が適当だったりする。
やはり傾く家には、『傾く理由』があるのだ。
・はじめてのフローリング施工
今回は、フローリング張りに挑戦することにした。
『挑戦』とは言ったものの、動機はコンプレッサーとフロアタッカーが欲しかったからだ。
床板のカットは、安全面を考えマルチツールを使用。
部材の切断加工は、100%これ1本でできる。

マルチツールでも、慣れればブレずに真っ直ぐ切れるようになる。
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マルチツール GMF50-36 BOSCH
フォームガンFG-300にボンドをセットして、カットした床材の貼り付け面に塗る。
あとはフロアタッカーで、床材を下地に打ち付けていくだけだ。

使い勝手のよい、フォームボンド。繰り返しの作業は、こういう道具を使うと時間短縮になる。
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MAX フォームガン FG-300
『パシュッ!パシュッ!』とフロアタッカーのエアー打ち音が気持ちよく響く。
もう気分は本職の大工だ。

フロアタッカーで斜め45度でホチキス留め
実は『コンプレッサー』と『フロアタッカー』は、この家の床を張った後で売ってしまった。
HIKOKIから電動のフロアタッカーが発売されたので、買い替えたためだ。

いまはドナドナされてしまった高圧コンプレッサーの勇姿。デカいので保管場所がなかった…
電動フロアタッカーの紹介記事は、コチラ
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HiKOKI(コードレスフロア用タッカ N3604DM
壁際のフローリング板と寄せるときは、『ノウリツバール』を使うと便利。
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土牛産業 ノウリツバール
『フローリングハンマー』は、跡が付かない白とかオレンジのヘッドのものがいい。
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土牛産業 フローリングハンマー
新しい作業をすると、新しい道具の知識も身につく。
・シロッコファンを付ける
キッチンには、750mm幅のシロッコファンを付けた。
シロッコファンのダクト径は、150mm。
これまで空けた穴の中では、最大サイズ。

150mmの『オバケホールソー』を取り付けたところ。
マキタの18Vドリルドライバーなら、巨大ホールソーを付けても余裕で回る。
それどころかパワーがありすぎて、両腕でしっかり支えてないと手首が折れそうだ。
グローブが巻き込まれて、指を折ったり。
電動ドリルの事故は、意外と多いので注意しよう。
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マキタ HP484DZ充電式震動ドライバドリル

外壁のモルタルごと150mmの穴あけ

外壁にはガラリを付けて、鳥やコウモリの侵入を防ぐ。
シロッコファンは16kgを超える重量物なので、支えられるだけの下地を作る必要がある。
工事のやりやすさを考え、吊り戸と換気扇部分の下地は石膏ボードではなく合板を入れた。
これで、どこにでもビスが打てるので、重いものを持ちながら下地を探す必要がない。

下地は周囲の石膏ボードと同じ厚みの合板を使用。

取付位置も、レーザーを使って水平を確認。傾いている家だと何をやるにもレーザー水平器が必要。
下地が可燃の板なので、不燃のキッチンパネルを上から覆うように張って仕上げる。
実際に火事になったことがあると、不燃材のアリガタサがよくわかる。
火事の記事は、コチラ

キッチンパネルの上からシロッコファンを取付。
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富士工業 レンジフード BDR-3HL-751W
ちなみに今回、クロスは外注している。
誰でもできる作業は節約効果が低いので、得意な職人にまかせてしまった方が良い。
・流し台と吊り戸はマイセット
最近は、マイセットのキッチンばかり使ってる。
手頃な価格ながら、デザインが洗練されてる。

夜中に1人で49kgの流し台を運搬。DIYは筋トレにもなる。
取手が本体に一体になっていて、中はブラック塗装。
メッチャかっこいい!

内側は黒で統一されたデザイン。
梱包ダンボールに印刷されたイメージキャラクターは、バカボンのパパ。
本体の高級感とのギャップが、オモシロい。

これでいいのだ
通常ならキッチンは『置くだけ』で完成するけど、この家は『崖の上の傾き戸建』。
『斜めの壁』と流し台の間に隙間ができてしまうので、バックアップ材とコーキングで隙間を埋めた。
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ONEDO(旧マイセット):M1-150J
・オシャレ照明とワックス仕上げ
リビングの天井には照明用の窪みがあるので、ここにはオシャレ照明をつけた。

いま流行りのキッチン4連照明。
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シーリングライト 4灯 LEDA

シンガポールあたりで流行っていそうな、オシャレ照明。
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おしゃれ LED 照明
さらに、照明を床に反射させるべく、フローリングに丁寧にワックスをかける。

ワックス前

ワックス後
ワックスをかけたら、床に窓や照明の光が映り込んで明るくなった。
それほど難しくなくキレイにできるので、ワックス仕上げは良いDIYだと思う。
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リンレイ ウルトラタフコートワイパーセット
ワックスは耐久が2年のものを、3回重ね塗り。
3LDKで合計で3本使うと、結構な値段になる。
この手間と価格を考えると、1.5〜2倍の値段かけてもダイミラーやダイヤモンドフロアー等の鏡面仕上げのフローリングを使っても良いかもしれない。
ボロボロだったリビングが、美しく再生された。
ここまでやると、自分でも住みたくなってくる。
途中で雨漏りがあったりと、なにかと苦労はあった。
でも一度若返らせてしまえば、社員とちがって文句も言わず黙々と働いてくれるのが、『物件』の良いところだ。
これからは、存分に家賃を稼いでくれたまえよ。



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コメント
社員治療、ご苦労様です!!┏○))ペコ
いやぁ物件を社員と考えると言うのは素晴らしいですね。
愛着と言う観点もありますが、何より賃貸中も守る気持ちが湧くと思います。
電動ネイルも気にはなっていたんですが、使用できる針が限られていると聞いて悩んでました。
でも素人DIYで強度を考える事までは無いかと思いました。
ワックスは一液タイプでも良いのが増えましたね。
以前業務用の2液タイプを使用したのですが、剥がれてきた時の修正は剥離から始まりかなり厄介でした。
1液で2年に数回塗る方が、モチも木材にも優しいので自宅ではそうしてます。
R@アール さん
ブログ来ていただき、ありがとうございます!
コメントもいつも、ありがとうございます!!
「社員を守る」というお気持ちに、心が打たれました。
と同時に、「社員=奴隷」と考えていた自分が恥ずかしくなりましたw
(なので社員は雇いません!)
HIKOKIの電動フロアタッカーは、マジ良いですよ。
とにかく手軽に持ち運べるし、作業効率も上がります。
ボクは38mmまでしか使わないので、乗り換えちゃいました。
2液のワックスがあるんですね。
勉強になります。
ありがとうございます〜