ちょっと前の話。
家の近くで、戸建てを買ったときのことだ。
契約がおわったあとの歓談中、業者の社長からお誘いをいただいた。
「もう1軒、これから値段をつけるワケあり物件があるけど買わない?」
家を3つ買った直後で、お腹はいっぱい。
あまり気は進まないが、誘われたら見に行くしかない。
約束の日に、現地へ向かう。
場所は、埼玉県某市の山奥。
自宅から車で40分、街から孤立した住宅街にその家はあった。
線引き前・築23年・駐車場2台つき
そして、告知事項アリ
母子の2人暮らしだったが、30代の息子が部屋で突然死をしたらしい。
どんよりとした曇り空の、午後2時。
事故物件の、ドアを開けた。
鍵を開けてくれた営業担当は、20代後半と思われるギャル。
「勝手に見てください」と言わんばかりに、スマホをいじってる。
空気を読んで、ボクも自由にあちこち拝見させていただく。
中に入ると、かなりキレイ。
一部の壁紙にペット傷があるものの、新耐震だけあってカッチリしている。
傾きも、もちろんない。
2日ほどかけて直せば、すぐに貸し出せそうだ。
昼間だけど、電気が通っていなくて暗い。
1階をひと通り見て、2階に行こうとした時だった。
階段横の壁に謎の穴が、たくさん空いている・・・
人為的に開けた、としか思えない穴。
母と子の壮絶な葛藤の末に、できた傷なのだろうか?
人間が力を入れて蹴飛ばさなければ、こんな穴はあかない・・・
いろんな想像をしながら、2階をチェック。
寝室もキレイ。ベランダも問題なし。
最後に、息子の部屋だ。
彼はここで、眠ったまま亡くなった。
ベッドはなかったが、黒いマットレスが、そのまま残置物となっている。
ボクは、特に霊感がある方ではない。
でも、ガランとしたその部屋からは、なんとも言えない寂しさを感じた。
部屋を出ようとした時に、ドアに多数のネジ穴を見つけた。
なんだろう?
!?
全身に鳥肌が立った。
そのドアには、上から下までビッシリと、大量の掛け金錠が取り付けられていた。
外界を完全に拒絶しようとする、強い意思を感じる。
次の瞬間
ガタン!!
大きな音がした。
ギャルが驚いて「なんの音ですか!?」と叫ぶ。
さきほどベランダを見たときに、絶対に倒れない角度で置いたはずの雨戸が、倒れていた。
風?そんなわけない。
台風でもなければ、こんな倒れ方はしない・・・
結局、この家には買い付けを入れたものの、値段が合わず契約にはならなかった。
告知事項アリの、この物件。
内装だけではなく、残った思念も浄化されて再生されることを祈るばかりだ。
事故物件に住んでみた! [ 森史之助 ]
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