電子書籍が本格的に普及してから、15年くらい経っただろうか。
広まったキッカケが、スマートフォン・タブレット端末の登場であることは言うまでもない。
わざわざ重たい紙の束を運ばなくていい。
何千冊でも持ち歩ける。
読み放題コンテンツもあるし、安い。
ところが、こんな素晴らしい電子書籍が登場しても、いまだに紙の本は無くならない。
なぜ???
ボク自身も、『マンガ』はスマホで読むことが多い。
でも、文字だけの本(主にお金と投資に関する本)はやっぱり紙を選んでる。
書店に行くこともほとんどなくなったし、タブレットも持ってる。
それでもわざわざ、ネットで紙の本を注文して読んでいる。
そんな”謎の行動”をしてるのは、ボクだけじゃない。
多くの調査結果を見ても、まだ多数派は『紙』の読者だ。
本日のテーマは、電子書籍と紙の本について。
スマホのプロとして仕事をしてきたボクが、自身の体験を交えて『紙の本が選ばれる理由』を解説する。
・電子書籍は記憶に残せない
ボクが最初にiPhoneを手に入れた、16年前。
使ったその日に「人類の記憶力は退化する」と思った。
インターネットの無限の情報が、いつでも持ち歩けるデバイス。
必要なことは検索で出てくるので、いちいち覚えておかなくて良くなった。
スマホからは、24時間いつでも必要な情報が取り出せる。
もはや、脳に繋ぎっぱなしの外付けハードディスク(外部記憶装置)と言っても良いだろう。
ボク自身も、スケジュールや電話番号を記憶しなくなったし
電車ののりかえ方法も、わざわざ覚えない。
電子書籍の内容も、脳は「記憶すべき情報」として認識しない。
スマホに入ってる情報は、覚えておく必要がないのだ。
「電子書籍は紙の本と比べて記憶に残りにくい」という実験データが数多くあるけど、当然の結果だと思う。
記憶力を低下させるキッカケとなる最初の端末。iPhone3G
・紙の方が集中できる
電子書籍を読むためだけにスマホを使う人は、ほとんどいないだろう。
電話としてはもちろん、メールやSNSやゲームとしても使える。
多くのことができる反面、集中してなにかをやるには向かない。
たとえばスマホで本を読んでいる最中に、SNSの通知が来たとしよう。
読書は中断され、新しい書き込みを確認することになる。
そのあと電子書籍に戻るかと思えば、他の通知バッジを見つけてしまい読書になかなか戻れない。
集中して本を読むには、電子書籍はジャマが入りすぎる。
ボクも、スマートフォンで読破できた本がほとんどない。
そもそもスマホやタブレットは、ものごとに集中できないように作られている。
コンテンツを作る側も、1つのことに集中されるより多くに分散させた方が儲かる。
電子書籍も、出版社にとっては売れさえすれば良いわけで、最後まで読んで頭に入れてもらう必要はないのだ。
・電子書籍は視力が低下する
ボクはもともと視力が悪かったけど、20年以上前にレーシックをしてから裸眼で生活できるようになった。
ところが今では目の筋肉が衰えて、なかなかピントが合わない。
スマートフォンを使い始めてから、視力がかなり落ちている。
同じ距離のものを見続けるのは、目にとって良くない。
ピントを固定し続けると、そこで目の筋肉が固まってしまうからだ。
タブレットやスマホは、目との距離が常に一定で固定されてしまう。
さらに画面も小さいので、どうしても目から近い距離でピントが固定されてしまう。
これが「スマホ老眼」と言われる視力低下の原因だ。
一方、紙の本は平らではないので、ページをめくるうちにピントが少しづつ変化する。
目にとってベストな環境とは決して言えないが、スマホよりは全然良い。
・紙の本はシェアできる
ボクの父は本をものすごく読む人で、年間1000冊は読んでたと思う。
子供の頃は、父親の本棚から勝手に抜き出して読んでいた。
3畳ほどのスペースに蔵書が天井まで積み上がり、読み物には不自由しなかった。
その影響もあり、読書の習慣が身についたと言える。
ボクも息子のためになりそうな本は、手の届く棚に置いておく。
すると勝手に持って行って、読み始める。
紙の本の良いところは、みんなで読むことができること。
読書の良い習慣を、家族にもシェアできる。
・著者からサインがもらえるのは紙の本だけ
不動産投資を始めてから、著者の方に直接お会いできる機会が増えた。
そのたびにご著書とサインペンを持参して、サインをいただくことにしている。
ポールさん、ニーノさん、田内さん、加藤先生、ふんどし王子様…
著者の先生方に感想を伝え、お話できるキッカケが作れるのは、良い体験になる。
ポール先生にいただいたサイン本。うれしい。
技術が進化すると、いろんなことができるようになる。
ただ、「できること=やっていい」ではない。
身の回りを便利にしてしまうと、それだけ人は退化する。
スマホや電子書籍も、その一つだ。
新しく登場するコンテンツに惑わされすべてを取り入れるのではなく、自分の意志で利用するものを選択しコントロールすることが大事だと思う。
紙の本を選ぶことは、「電子書籍を使わない」という選択なのだ。
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